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2014.12.25

2014年 香港10大ニュース

 2014年は行政長官の普通選挙問題をめぐり「セントラル占拠行動」が発生。それに先駆けて民主派への政治献金が暴露されるなど、背景の一端をのぞかせた。占拠行動の最中にスタートした上海・香港両証取の相互乗り入れや、広州と香港を結ぶ高速鉄道の工事遅延問題も注目された。昨年の主なニュースを振り返る。

第1位 セントラル占拠が発生 2017年の普通選挙めぐり
構想発表から2年近くを経て実施された「セントラル占拠行動」は学生を中心に金鐘、銅鑼湾、旺角など各地を占拠し約2カ月半にわたる大規模デモ活動となった。
 香港専上学生連会(学連)は9月22日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会による行政長官普通選挙に関する決定への抗議として授業ボイコットを開始。決定撤回や香港基本法に反する「住民指名」の実現、梁振英・行政長官らの辞任などを要求した。
 金鐘の特区政府本庁舎前で集会を行っていた学生らは26日深夜から政府本庁に乱入して警官隊と衝突。セントラル占拠行動の戴耀廷・発起人は28日未明に占拠開始を宣言した。参加者らは金鐘の幹線道路を占拠し警官隊と衝突したため、28日夕方から警察は催涙弾を放ち強制排除を試みたが、収束の気配は見られなかった。同日夜からは警察に抗議する市民らが警察本部前、銅鑼湾、旺角に集まり、占拠行動が拡大した。
 占拠行動が始まってから路線バスの運休・路線変更、小中学校の休校、銀行の営業拠点閉鎖、緊急車両の到着遅れなど市民生活にも影響。経済的な打撃も顕著となった。香港中小型企業大連盟の調査では42%が10〜30%の売り上げ減と答えた。セントラル占拠に反対する「保普選反占中大連盟」は11月3日、警察を支持する署名活動の結果を発表し、183万5793件の署名が集まった。

第2位 普通選挙の枠組み決定 政治体制改革プロセス立ち往生
 特区政府は2013年末、17年の行政長官選挙に向けた政治体制改革の公開諮問を開始。5カ月を経て報告書を作成し全人代常務委員会に提出した。
 全人代常務委は8月31日、行政長官の普通選挙問題と2016年の立法会議員選挙に関する決定草案を可決した。決定内容は主に(1)指名委員会は現行の選挙委員会に照らし、4大分野(工商・金融界/専門業界/労働・社会福祉・宗教界など/政界)が同等の割合、1200人を維持(2)正式な行政長官候補は指名委員会の過半数の支持が必要(3)候補者数は2〜3人——となっている。この決定により政治体制改革プロセス5段階の第2段階が完了。決定に基づき特区政府が立法会に改革案を提出、3分の2の支持が得られなければ否決となり、17年の行政長官選挙は現行の方法で行われる。全人代常務委の李飛・副秘書長(基本法委員会主任)は9月1日、来港して行った全人代の審議状況の説明でセントラル占拠に触れ、「違法活動による脅迫に屈すれば違法活動が増えることを考慮した」と説明した。
 民主党と工党は決定に先駆け「指名委員会の過半数の支持」を堅持するならば立法会で改革案を否決すると予告していたが、決定を受け民主派議員27人は立法会で否決しセントラル占拠を支持する声明に署名した。9月28日に始まった占拠行動によって、10月から始める予定だった政治体制改革の第2回公開諮問は早くとも1月7日の開始となる。公開諮問の期間も1回目より短く、最長でも約2カ月との見通しだ。ただし民主派議員らは公開諮問のボイコットを宣言。普通選挙は棚上げされる可能性が高い。

第3位 民主派と中央政府が対話 大衆迎合主義の回避など説明
 立法会議員50人余りが4月12〜13日、上海市を訪れ、2017年の行政長官選挙について中央官僚と意見交換を行った。こう着状態の政治体制改革の議論を前進させるため、民主派と中央高官による単独会談も実現した。
 立法会全体による中国本土訪問は過去に2回行われ、05年9月の広東省訪問では議員60人のうち59人が参加、うち民主派は25人、10年5月の上海訪問では議員55人のうち42人が参加、うち民主派は8人だった。
 今回の上海訪問では国務院香港マカオ弁公室の王光亜・主任、全人代常務委の李飛・副秘書長らとの会談が設定された。香港マカオ弁公室主任が立法会議員全員と会談するのは初めて。だが参加届け締め切りである3月31日までに届け出たのは親政府派全員のほか、民主派からは1人だけだった。その後、民主派からの参加が14人、全体で57人となった。
 全体会談で李秘書長は、「住民指名」は基本法に反すると明言し、指名委員会が行政長官候補を指名するのは(1)政治対立(2)立憲政治の危機(3)大衆迎合主義——のリスクを低減するためと説明した。

第4位 民主派への献金暴露 黎智英氏と米国の関係に注目
 『りんご日報』などを発行する壱伝媒集団(ネクストメディア)の黎智英(ジミー・ライ)会長が民主派の政党や関係者に多額の献金を行っていたことが7月に暴露された。公にされた資料からは黎氏が民主派を財政面で支えていることが分かるほか、黎氏と米国との関係も明らかになった。
 献金疑惑は「壱伝媒の一般株主」と名乗る者がメディアやネット上で暴露したもの。2012年4月から14年6月までに9団体と14人に計4080万ドルを献金したことを示す小切手や領収書などが公にされた。政党では民主党、公民党、個人では陳方安生(アンソン・チャン)元政務長官、真普選連盟の鄭宇碩・召集人らが目立つ。
 壱伝媒集団傘下のネット番組に出演した黎氏は暴露された書類が本物で、献金した事実を認めた。選挙条例や立法会の議事規則では献金の申告が義務づけられているが、献金を受けたとされる民主派議員らはみな申告しておらず、献金を否定する者もいる。
 公にされた書類の多くには壱伝媒集団幹部のマーク・サイモン氏のサインが記されている。サイモン氏は米共和党香港支部長を兼務、米海軍で情報工作に従事した経験を持ち、黎氏による政党への献金処理をすべて担当している。
 また5月末にはネオコンの論客で知られる米国のポール・ウォルフォウィッツ元国防副長官と黎氏が香港で密会していたことが暴露されていた。時期的にセントラル占拠行動に向けた準備と憶測されている。

第5位 上海・香港証取の相互乗り入れ セントラル占拠で遅延?
 李克強・首相が4月に発表した上海と香港の証券取引所の相互乗り入れが11月17日から始まった。相互乗り入れは上海証取が窓口となって中国本土住民が香港株を直接取引でき、域外投資家は香港取引所(HKEx)を通じてA株に投資できるというもの。中国の資本市場開放の一環である同措置は香港にとっても国際金融センターとしての地位強化につながる。
 当初10月の開始が見込まれていたものの、HKExは10月26日、まだ承認を得ておらず開始日時が確定していないと発表。中央消息筋は相互乗り入れの遅れは「中央はセントラル占拠によって香港の法治が打撃を受け、金融商品に対する外界の信頼に影響することを懸念している」と指摘した。
 相互乗り入れの開始から1カ月で上海総合指数は23.5%上昇したものの、ハンセン指数は6.2%下落した。一方、相互乗り入れに合わせて香港住民の人民元両替上限(1日2万元)も17日から撤廃された。

第6位 高速鉄道の工事遅延 開通は17年にずれ込み
 広深港高速鉄路(広州—深圳—香港間高速鉄道)香港区間は建設工事の遅れのため予定されていた2015年の開通には間に合わず、1年以上先送りとなることが分かった。香港鉄路公司(MTRC)が4月15日に記者会見を行い、工事完了は少なくとも9カ月遅れて16年となり、開通は早くとも17年にずれ込むと発表。主な遅延理由として(1)3月30日の暴雨で元朗のトンネルが浸水し大型掘削機が故障(2)西九龍駅地下の地質と大量の公共パイプライン(3)深圳河周辺の地質——の問題を挙げた。
 立法会で5月5日、鉄路事宜小組委員会の会議が行われ、MTRC側から銭果豊・会長とジェイ・ウォルダー最高経営責任者(CEO)らが出席した。当初、政府は立法会で開通が遅れる可能性を示唆するつもりだったが、ウォルダーCEOが運輸及房屋局の張炳良・局長に電話で「15年末の開通は可能」と強調したため、MTRCを信用したことが明らかにされた。MTRCは5月8日の株主総会ではウォルダーCEOが来年8月で退任すると発表。ただし契約満了に伴うものと説明した。

第7位 自由行を見直しへ 20%削減で経済への影響も
 中国本土からの旅行者に対する香港市民の反感の高まりから自由行(観光目的の個人旅行)の見直しが取りざたされた。梁振英・行政長官は5月26日、策略発展委員会の会議で自由行による旅行者が20%減少した場合について意見を求めた。中央政府と香港特区政府は自由行問題について香港側の受け入れ能力などの調査研究を行っており、20%削減は1つの検討課題になっているもようだ。
 立法会が5月に発表した研究報告によると、03年7月に自由行が始まって以来、04年には約270億ドルだった本土観光客による消費額は13年に6.3倍の約1700億ドルに達し、13年の小売総額4944億ドルの約3分の1を占めるまでになった。
 だが社会には代償として日用品の供給、公共交通機関と地元施設の使用量への影響、そして繁華街の店舗の画一化などがもたらされた。感染症の影響などでひとたび自由行が停止されれば小売業界は一夜にして3分の1の収入源を失うというリスクも抱えている。

第8位 不動産相場が過去最高 過熱抑制策はようやく可決
 立法会で7月15日、前年2月に打ち出された不動産市場の過熱抑制策「2013年印花税(修訂)条例草案」が可決された。可決前には曽俊華(ジョン・ツァン)財政長官が5月に住宅価格が顕著な伸びを示したことを指摘し、同草案が通過しなければ「市場環境の変化に迅速に対応することは難しくなる」とバブル再燃を憂慮していた。
 住宅市場の過熱は抑制策によって下火となったものの、再び上昇傾向に戻った。特区政府差餉物業估価署が発表した5月の住宅価格指数は246.8で、ピークに当たる前年8月の246.3を上回り過去最高となった。5月13日に発表された不動産抑制策の緩和が市場を刺激したとみられる。10月の住宅価格指数は270.1となり、さらに過去最高を更新。年初からの累計では110.2%の上昇となり、前年通年の5.4%の倍の伸び率となった。

第9位 新聞界への襲撃相次ぐ 報道の自由めぐり抗議デモ
 『明報』の劉進図・前編集局長が2月26日、暴漢に襲われ重体となり、香港社会を震かんさせた。3月12日までに9人が逮捕され、いずれも香港市民だった。劉氏は1月20日の人事異動で系列の世華網絡資源営運総監に転任。前年10月の無料テレビ放送免許をめぐる過度な報道が経営陣の不満を買ったとみられている。
 続く3月19日には創刊準備中の中文紙『香港晨報』の利婉嫻・副総裁と新聞部幹部の林健明氏が襲われた。同紙は中国政府など本土からの資金で発行するとのうわさが流れていたが、『香港晨報』準備委員会はすべて地元資金と強調した。
 香港報業公会など5大報道関連団体は3月2日、報道に対する暴力に抗議するデモを開催するなどで報道の自由をめぐる問題が注視された。

第10位 フィリピンへの制裁発動 香港人ツアー人質事件で
 フィリピンで発生した香港人ツアー人質事件をめぐる事件が3年8カ月を経て一段落した。2013年11月7日、3年前の人質事件をめぐるフィリピンに対する制裁議案が可決され、特区政府は14年2月5日、フィリピンに対する第1段階の制裁を実施。フィリピンの外交・公用旅券所持者に対する14日間のノービザ入境停止。年間700〜800人が影響を受けることになる。
 だがフィリピンのアキノ大統領は米紙『ニューヨーク・タイムズ』のインタビューで、法的責任を問われるのを避けるため、謝罪する意思のないことを表明した。
 4月23日、梁振英・行政長官は来港したエストラダ・マニラ市長とアルメンドラス大統領府長官と会談。フィリピン側が特区政府の提示した謝罪や賠償など4つの要求に答えて合意した。(2015年1月1日号『香港ポスト』


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